グローバルプロジェクトから得た顧客ニーズやアイデアを製品強化に活かす

ビジネスエンジニアリング株式会社
プロダクト事業本部
プロダクトサービス本部
システムインテグレーション3部
プロジェクトマネージャー/製品コンサルタント
安孫子 巧



顧客ニーズを満たし、持続可能な製品を提供をするために

日本企業の海外事業展開をサポートするグローバル経営基盤システム「mcframe GA」は、世界各地で推進する導入プロジェクトから獲得した知見やアイデア、顧客から寄せられた意見、課題の解決策などを新たな標準機能として実装することで、絶え間ない進化を遂げている。新機能選定委員(※)として中心的な役割を担っている安孫子巧は、マーケットニーズを満たすとともに持続可能な製品の提供を常に重視し、mcframe GAの価値創造に強い使命感を持って製品強化に臨んでいる。

 

※)mcframe GAの製品開発プロセスは「ステージゲート法」に類似した手法により、競争優位性を維持している。

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新機能選定委員としてのミッション

日本企業のグローバルビジネスを支援する会計/ERPクラウドシステム「mcframe GA」。その強さがどこにあるのかを掘り下げていくと、ビジネスエンジニアリング(B-EN-G)自身が開発したプロダクトであるという点にたどり着く。世界各地で推進している新規導入プロジェクトや既存顧客からの要望、および将来の顧客課題を想定したシステム要件は、製品開発テーマとしてバックログ(VOC LIST)に集約し、VOC LISTから優先順位の高い開発テーマを次期バージョンの新たな標準機能として実装する独自の製品開発プロセスにより、ユーザーニーズを最大に満たす製品で有り続けているのだ。
mcframe GAの製品開発プロセスでは、VOC LISTから次期バージョンの開発対象を確定するための「新機能選定委員会」を設けている。新機能選定委員は開発対象を設定するだけでなく、QCD上のリスク対策として、既存機能への影響範囲の見極め、システム機能への落とし込み、製品開発チームとプロジェクト推進チームとのブリッジ役を担っている。
プロダクト事業本部 プロダクトサービス本部 システムインテグレーション3部の安孫子巧も、新機能選定委員メンバーである。
米国の大学を卒業して2008年にB-EN-Gに入社。以降、5年間にわたり主にSAP ERPの会計領域の導入や保守を担当してきた。その後、米国で磨いたグローバル感覚や語学力を活かす形で、自社製品のmcframe GA導入プロジェクトにも参画し、経験を積み重ねてきた。


安孫子は新機能選定委員としてのミッションを次のように語る。
「新機能選定委員のもとには、さまざまな導入プロジェクトに携わる多くのコンサルタントから、新機能に対するアイデアや要望が集まってきます。ただし当然のことながら、すべてを取り入れることはできません。パッケージソリューションである以上、その機能は汎用性を持ったものでなければならないからです。お客さまの課題解決に大きく貢献した卓越した創意工夫に基づくものだったとしても、あまりにも特異なものを標準機能として組み込んでしまうと、パッケージソリューションとしてのコンセプトの一貫性が崩れてしまいます。そこで多角的な観点から厳格な精査を行い、製品開発チームのリソースも考慮した上で、実装すべき新たな標準機能を選定しています」

成功要因はすべての関係者に“安心感”を与えること

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安孫子がどうやって新機能選定委員としての能力やセンスを磨いてきたのか、これまでのコンサルタントとしての実績をたどってみたい。
安孫子自身が「非常に苦労し、最も印象に残っているプロジェクトの1つ」として挙げるのが、mcframe GAがまだ「A.S.I.A.GP」と呼ばれていた頃の2013年に携わった、大手電機メーカー系列のエレクトロニクス商社の導入プロジェクトである。
海外8カ国の拠点でバラバラに導入されていた会計パッケージを統一することで、「日本の本社側で財務会計情報をタイムリーに確認できない」「与信状況の把握が遅れる」といった課題の解決を図るものだ。安孫子はドイツ拠点での導入を担当することになった。
ところが、ドイツ拠点がもともと導入していた会計パッケージも決して機能が劣るわけではない。むしろ会計事務所などでも広く導入され定評を得ていた製品であり、これを覆すのは容易なことではなかった。

そこで安孫子は、ドイツ拠点の業務現場はもとより、提携している会計事務所や監査法人にも直接出向いて、mcframe GAのプレゼンテーションやデモを行い、「会計パッケージが変わっても、業務にはまったく支障がないことを根気強く説明しました」という。ここでも、米国への留学経験で培った安孫子の語学力や国際社会に対する感性が大きく活きることになった。
こうして“土台”を築き、会計パッケージのグローバル統合への理解を得たことで、財務会計業務は標準化することができたのだ。
「ドイツ拠点のデータを本社側からも即時に、なおかつ会計仕訳単位で閲覧することが可能となりました。売掛金と買掛金の連携により、与信状況もタイムリーに確認することができます。また、より詳細な状況把握が必要となった際にも、日本と現地で同じ画面を共有しながら会話できるなど、コミュニケーションの負荷も低減しています」と、安孫子はこの導入プロジェクトで得られた成果を示す。

結果として、この実績が欧州におけるmcframe GAの本格展開への足掛かりとなったのである。「成功要因を挙げるとすれば、拠点のスタッフおよび関係者に“安心”を感じてもらえたことでした」と安孫子は振り返りつつ、「国や地域ごとに異なる多様な価値観や業務ニーズに応えられる、高度な柔軟性と汎用性を持った標準機能を提供することの大切さを、このプロジェクトで実感しました」と語る。

 

パッケージの機能強化につながる“攻めの手”を打つ

新機能選定委員としての安孫子のその後の足場を固めたのが、2019年から携わった産業用エレクトロニクス・メカトロニクス関連の大手技術商社の導入プロジェクトである。海外拠点にmcframe GAを導入するもので、安孫子はその1つである中国・上海拠点への導入を担当したのだが、きわめてチャレンジングなプロジェクトとなった。
「mcframe GAが主なターゲットとしているのは中小規模の海外現地法人ですが、そもそもお客さまの上海拠点は海外売上の大部分を占めている大規模な拠点であり、mcframe GAの機能だけでは業務をまかなうことはできなかったのです。大量のアドオンプログラムの開発を余儀なくされ、『パッケージをもとに業務を標準化する』という基本コンセプトとの間で大きな乖離が生じました」と安孫子は語る。
ただ、そうした中でも安孫子にあったのは「逃げのアドオン開発にはしたくない」という強い思いである。「アドオン開発を行うにしても、今後のパッケージとしての機能強化や進化につながる“攻めの手”にしたいと考えました」と語る。
安孫子は製品開発チームと緊密にコミュニケーションを取り、設計思想や開発管理のあり方、ロードマップへの理解を深めながらすり合わせを行い、さまざまなアドオン開発に臨んだのである。結果として、上海拠点においても業務標準化の目標から逸脱することなく、会計パッケージの統合を成し遂げることができた。


具体的に、安孫子はどんな“攻めの手”を打ったのだろうか。
UI(ユーザーインターフェース)の改善もその1つである。調査フェーズの段階では、当時のUIに対して上海拠点の現地スタッフから「これでは業務を遂行できない」と大きな不満が寄せられていた。この課題を解決するためにはUIをカスタマイズせざるを得ないところだが、安孫子はそうしなかった。mcframe GAのロードマップを熟知していた安孫子は、次期バージョンでの搭載が予定されていた新UIを、mcframe GAのプロジェクトとして初めて適用することにしたのである。
「これによりシステムの操作性に関する不満の多くが解消され、お客さまからも“これなら使える”といった評価をいただき、実運用への目途が立ちました。他にも指摘をいただいた不足機能について、新バージョンでの実装見通しがあればそれを示すとともに、それを前提にしたスケジュールを立案しました」と安孫子は語る。
安孫子はこの導入プロジェクトから導き出されたさまざまな課題の解決策を、できる限りmcframe GAに反映していくことにも注力した。例えば上海拠点でも使われることになった単価管理機能の強化である。
「現地のパッケージシステムまたは海外の有名なシステムであっても、お客さまが求めるような単価管理ができないことが多いのです。そのためシステム外で単価を管理し、都度入力をしているというお客さまをこれまで多く見てきました。もともとmcframe GAには単価管理機能がありましたが、以前よりも条件に応じてより細かな単価を登録できるようにすることで、多くのお客さまがそのメリットを享受できます。“今後の標準機能として必ず役立ちます”と製品開発チームに強く進言しました」と安孫子は語る。
そして実際、このロジックはベストプラクティスとしてmcframe GAに実装されることとなり、多くの企業の課題解決に貢献している。

業務標準化に向けた“当たり前の基準”を持つことが重要

上記のような取り組みからも言えるように、世界各地で行われている多くの導入プロジェクトが1本の線でつながることで、mcframe GAは持続的な進化を遂げている。まさに、その“橋渡し”を担っているのが新機能選定委員なのである。
「常にお客さまのことを知ろうとすること、寄せられた質問の背景を深堀りすること、そして要求に対して単にシステム的な回答をするのではなく、業務的な視点をもって“お客さまの真意”に回答することが重要です。またパッケージ導入を完了させることがプロジェクトの目的ではなく、稼働後にお客さまが満足した形でmcframe GAの価値を享受しながら利用を継続していただけることを念頭に置いて、要件定義や設計に臨むことを忘れてはなりません。お客さまのシステム導入の目的を、事あるたびに振り返りながら、無理のない業務フローとなっているかどうか、保守メンバーが後から困らない設計書やマニュアルを準備できているかといった点などにも目を配ることが大切です」と、安孫子は改めて自らの使命感を示す。


さらに、パッケージを導入する企業の大きな目的に業務標準化があることを捉え、「これにお応えできる“当たり前の基準”を高く持つことが重要です」と安孫子は語り、今後の製品強化の方向性を見据えている。

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