ビジネスエンジニアリング株式会社
ソリューション事業本部
SCMソリューション第2本部 SCMソリューション4部
プロジェクトマネージャー
大竹 雄
昨今、医薬業界では医薬品製造工場のグローバル化から発展途上国で生産される製品の急激な増加や品質システムの欠陥の増大を是正するため、法規制がますます厳格化し、対応が複雑化している。
そうしたプロセス重視の機運のなか、とくに厳密なデータの取り扱いが要求される医薬・製薬企業の課題解決に向け、豊富な実績と経験に基づいたリーダーシップを発揮しているのがB-EN-Gだ。ソリューション事業本部SCMソリューション第2本部SCMソリューション3部の大竹雄が所属するコンサルティングチームが手がけているプロジェクトを紹介し、医薬・製薬企業からB-EN-Gが"業務革新の拠り所"とされている理由を探る。
現在、ソリューション事業本部 SCMソリューション第2本部 SCMソリューション3部では、ある大手製薬会社におけるSAP ERPとMESの統合システムの構築から保守までを一貫してサポートしており、20~40名のメンバーを常駐させている。
昨今、「インダストリアル4.0(第四次産業革命)」のキーワードに象徴されるように製造業のIoTへの取り組みが注目されているが、実は2000年代初頭から製薬業界で進められてきたERPとMESの垂直統合プロジェクトこそ、まさにその先駆けと言えるものなのだ。
2010年2月からそこに加わり、2014年には保守のプロジェクトマネージャーを務めた大竹雄は、このERP-MES統合システムの特徴を次のように話す。
「製薬工場内に分散設置された多種多様な製造設備の状態監視からデータ収集まで担っている『SCADA(Supervisory Control And Data Acquisition)』、倉庫を含めた自動搬送を制御する『MHS(Material Handling System)』など、周辺システムとMESの連携を実現しました。これにより製造作業者は、MESの画面指示に従って操作するだけで、指示書通りの製造設備の運転が可能となります」
ERPとMESの垂直統合により、製薬工場は画期的な生産性向上を実現できるわけだが、実はそれ以上に重要なテーマがある。それはコンプライアンス対応だ。医薬品は人間の生命にも影響を与えることから、製造に関するあらゆる証拠を残し、医薬品の品質に問題がないことを保証することが法的にも求められるのである。
まずは「操作ログ」の保全だ。「製造作業者がMESの画面上でどのような操作を行ったのか。たとえば『混合機を1分間回す』という指示を入力したのであれば、その操作を正確に記録しなければならない。特に困難なのはイレギュラーな事象が発生した際の対処で、MESを介さずに各製造装置をマニュアルで動かした場合でも、その操作内容を漏れなく記録しなければなりません」
さらに、これらの操作ログは後々の「監査証跡」として認められるものでなければならない。関係者外への情報漏えいや改ざんなどが行われないように、機密性(Confidentiality)、完全性(Integrity)、可用性(Availability)などの電子記録・電子署名要件を満たしたシステム上で厳重に保管する必要があるのだ。
「本件では医薬品製造における事実上の国際標準となっているFDA(米国食品医薬品局)の規制『21 CFR Part 11』に準拠したEBR(Electronic Batch Recording)を導入し、長期わたる操作ログの保管と製造責任者の電子署名を実現しました」
そして現在、医薬品製造に関する法規制はグローバルレベルでますます厳格化される傾向にある。この潮流を受け、大竹が2016年8月から現在に至るまでプロジェクトマネージャーを務めているのが、DI(Data Integrity:データの完全性)強化を目的としたシステム導入である。既存のSCADAがサポート期限切れとなり、次期パッケージの選定・導入が必要になったことがプロジェクトの発端である。
上記のようなDI要件を満たすとともに、世界的にも豊富な実績を有するパッケージ製品として、B-EN-GではOSI soft社の『PI System』(※1)の導入に至った。現在、大竹を中心とするプロジェクトチームは既存のMESとのインターフェースをアドオンで開発し、順次実装を進めている。
背景にあるのは、医薬品製造工場のグローバル化、国際化である。特に近年、発展途上国で生産される製品の急激な増加とあわせ、製造にかかわるGMP及び品質システムの欠陥の増大が判明し、規制当局がこれらの是正も含め、改めてDIという概念でガイダンスを発行している。 なおDIに関連して流通機構においても製品情報の厳格な管理とトレーサビリティを要求するGDP(Good Distribution Practice)が強化されつつあり、バイオ製品の増加に伴う温度管理と、欧米で特に問題となっている偽薬対策への取組みが厳格化されつつある。そうしたなかで、DI強化をはじめとするコンプライアンス対応は、システム実装時の最優先の要件となるだけに、最新ソリューションの情報収集と調査研究を怠ることはできない。こうした製薬業界を取り巻く環境や要件の変化を深く理解し、実装しなければならない機能を先取りして提案できるB-EN-Gの対応力が、お客様から高く評価されている。
「ERP、MES、MHSの導入から保守まで、製薬業の広範な業務を一貫してサポートし、多くの実績と専門的な知見を培ってきたB-EN-Gだからこそ、医薬品サプライチェーン全体を見据えた最適解を提示することができるのです」
医薬品の安全性向上と医薬業界のさらなる発展に向け、B-EN-Gは今後も確たる貢献を目指していくとし、「最先端かつデータの取り扱いに関して厳格な規制が敷かれている医薬業界を経験していれば、当然、他の業種にも応用がきくはずです」と大竹は語る。豊富な実績と専門的な知見に基づきながら最適解を発見していく力こそが、B-EN-Gの「ハイフォーマンス・エンジニアリング」という強みだ。
※1:PI Systemとは、OSIsoft社が開発したリアルタイム製造情報管理システム。多様な業務にまたがる複数のソースから生産実績、品質情報、設備稼働率などの時系列データを収集・分析し、リアルタイムな可視化と共有化を実現する。
[掲載内容は2017年12月時点のものです]
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